ジャネット・リーバ
ジャネット・リーバのロック・アート
Janet Lever
今日生かされていることを祝う、人に力を与える器
およそ500年前、ヨーロッパから人々がアメリカ大陸にやってきた。最初の厳冬、飢えと寒さからフロンティア達を救ったのはアメリカインディアンたちが分けたとうもろこし、じゃがいもだった。その後生き延びたフロンティアはキリスト教をアメリカインディアンの小さな村々に伝道した。数々の悲しい歴史を重ねながらも、この土地のあちらこちらでインディアンの自然を神として崇拝する心と、キリスト教が融合した。
今でもアメリカ・ニューメキシコ州に土壁・アドビースタイルの乾いた土の教会が多く残っている。
豊かでおおらかですべてを受け止める大地のような大皿
ジャネット・リーバは長年陶芸家としてろくろを回している。
ニューメキシコ・サンタ・フェで彼女の器を初めて見た時、そのアドビースタイルのギャラリーは彼女の器にぴったりの場所だと感じた。
Feast(ラテン語で宗教上の祝祭の意味)、神に感謝を捧げ、生きていること、生かされていることを祝う日の食卓にふさわしい器だと思った。
彼女は東京で個展を開いたことがある。私は手伝う機会を得たが、多くの人が集まり、日本の磁器に比べると少し重いのにもかかわらず、作品は次々に買われていった。個展としては成功を収めた。
日本ではその頃、サンタフェ・ブームが始まったばかりだった。
彼女の器に必ず描かれているピクトグラフィー(絵文字)は、この新大陸にヨーロッパの人たちが上陸する前に、ネィティブのアメリカインディアンが、コミュニケーションの手段として使っていたもの。
世界に点在する先住民族が残してきたように、アメリカインディアンも、自分の棲み家の壁にさまざまな出来事や、記憶、夢、感情を絵文字という素敵な形に残していた。
ジャネットはひとたび陶芸のスタジオから離れると、プエブロの遺跡、動植物の分布を調査するキャニオンをとりまく環境、アメリカインディアンの神話、彼らの手工芸や歴史を考証するボランティア活動にいそしんでいる。
このフィールドワークは彼女の創造の源でもある。
平原に立つと聖なる山、小川、岩、一面見渡せるセージブッシュの草原が、超自然な力を発しているのを感じることができる。
古代の人々の目にも、同じこの景色は感動を与え、ピクトグラフィ(絵文字)を残させたのだろう。
現在観光スポットを訪ねると身近にその宝庫を目にすることができる。
器の他にも、”フェテッィシュ・ジャー”と名付けた壺には、蓋の取手に小さな動物の神である熊がお守りとして鎮座している。
ある友人は「これを自分の骨壷に」と買ってくれた。
眺めていると手を合わせたくなる。厳かな気持ちにさせる不思議な壺だ。